第6章 麦わらとハート
手錠が外れた途端、マフラーの男の着衣が気化したような奇妙な装いになったように見える。
『アイツも能力者か。仲間なのに何で海楼石で拘束してたんだ?』
「仲間じゃない。お前には関係のないことだ」
襲い来る闘魚の群れを次々といなしながら、更に先へ走っていく。
「駆け抜けろ!!」
「おめェも少しは戦えよ!」
長鼻がフードの男に言う。フードの男は指令役というわけでも戦力外というわけでもないらしい。
「おれの能力は使う程に体力を消耗する……"帰り道"こそ本領を出さなきゃならねェ。少しでも力を温存しておくんだ! 相手はドフラミンゴだぞ……!!」
4人中3人が能力者か。大層な一行だが、一体何のためにわざわざ無人の離れ小島へ行くんだろう。
『今ドフラミンゴって……お前たちドフラミンゴの敵か?』
「そうだ。何か文句あるか」
前を走るフードの男が振り返りもせずにマルーに返答した。
『私もドフラミンゴが憎いんだ。お前たち、アイツを倒しに来たのか……?』
果たしてコイツらは勝てるだろうか。殺せるものなら殺してほしいが、今朝ぽっと出の希望を数時間も経たないうちに無かったことにされたマルーは手放しに喜べなかった。
『気を付けろよ。アイツらのせいでたくさんの奴らがオモチャに……』
「おいヤベェ! 橋が壊れてる!!」
『わ……ッ!』
長鼻が突然立ち止まり、肩に掴まっていたマルーは走っていた勢いのせいで前に投げ出された。
マズイ、このままじゃ転がって海に落ちる。
空中でマルーが焦るも、もはや何も対策は打てない。
『………あれ?』
死ぬかもと思ったが、なかなか落ちなかった。浮いたまま止まっている?
見ると、フードの男が腕を伸ばし、マルーを寸でのところでキャッチしていた。
『すまない。助かった、ありがとう』
「おれ達はいま自分達のことで精一杯なんだ。次は無いぞ」
言いながら男は被っていたフードを取り、そのままマルーをフードの中に入れた。
なるほど。ここなら安定感がある。
「おいッ! 正面から闘魚が……!」
長鼻が目の前の霧立った海面から迫ってくる闘魚を見てパチンコを向けた。
跳ね上がって橋に乗り上げようとした闘魚が一行に襲いかかったその時、海中に張られていたのか闘魚は大きな魚網に捕らえられて動きを止めた。
「!?」