第6章 麦わらとハート
マルーも柵をくぐり抜け、男女に向かって走る。
男3人と女が1人。このままでは闘魚の餌食になってしまう。
「待て! それ以上行ったら危ないぞ!」
声を掛けながら、歩く彼らに急いで近付き後ろ頭がモサモサした男の肩に飛び乗った。
「うおわッ! 何だ?!」
やけに鼻の長い男が突然肩に乗ってきたぬいぐるみに対して驚きの声を上げる。
『闘魚が来るぞ、死にたくなきゃ早く街に戻れ!』
「いや、でもよォ……おれ達この先に用事が……」
言うや否や、海から大きな角の生えた魚が鉄の防護柵をひん曲げながら突進してきた。
「うわあああっ!!」
闘牛のような面相の魚の目がこちらをしっかりと見ている。狙われているのは確かだった。
「"闘魚"って言うからてっきり魚かと……」
「魚じゃねェか」
「もう魚じゃねェだろあれは!!」
「海獣と変わらねェ! 獣だ!」
男女が逃げもせず呑気に騒いでいる。よく見たら付け髭とサングラスを着けた変な奴らだ。
『ボサッとしてないで逃げろ! 潰されるぞ!』
頭がおかしいのか?とマルーは思いながら急かすも、長鼻の男はパチンコを構えて闘魚に向けて撃つ。
「"必殺緑星"ドクロ爆発草!!」
「"千紫万紅" "巨大樹"……"スパンク"!」
女が腕を構えると、鉄橋から大きな腕が生えて闘魚の顔を張り飛ばした。
『能力者……?!』
闘魚を振り切り、走って更に橋の奥へ進んでいく。マルーは長鼻の男の肩にしがみつきながら驚嘆の声を上げた。
「おれは違ェけど、ロビンはそうだ!」
「危険を知らせに来てくれたのに巻き込んでしまってごめんなさいね」
マルーに目を向けながら女が言う。単身で本土に戻るにはもう無理そうな距離になっていた。
コイツらに声なんか掛けなきゃよかった。マルーは内心で少し後悔する。
「鼻屋! シーザーにも戦わせるから錠を解け!」
フードを被った男がマフラーの男を指差しながら言う。
よく見たら手錠で拘束されているマフラー姿のその男は明らかに戦いたくなさそうだったが、何か弱みを握られているらしく錠が外れると渋々言うことを聞いた。
「この天才科学者をコキ使うとは……! "ガスティーユ"!!」
すごい威力だ。爆発で闘魚に強烈な一撃をお見舞いした。