第5章 ドレスローザ
『ぐああああ!!』
爆発が身体を焼いていく。命の危機を感じつつ、マルーは燃焼によりベタベタから解放された手で急いでポケットをまさぐった。
『ッ……上等だァ! てめェも燃えやがれ!!』
悲鳴混じりに声を張り上げながらマルーは取り出したライターをトレーボルに向かって投げ付ける。
裾の粘液に引っ付いたライターを見て、トレーボルはせせら笑いを浮かべながら鼻水を吹き出した。
「バカめ、着火されてないライターじゃんねー!」
トレーボルのにやけ顔を無視して、マルーは意識を裾に集まったアメーバに集中させる。
『……"モールド"』
見つめる先のアメーバが手の形になり、そのまま近くのライターを掴むとトレーボルの身体のベタベタに着火した。
「ベヘェェェェ?!!」
『ハハッ、ざまあ見ろ……!』
マルーは増殖し、安全なところまでアメーバを伸ばす。増殖した分を人の形に戻しながら、燃える粘液に覆われた部分を不必要なものとして分離させた。
「ん、んねー……! 海楼石で動けなかったはずじゃ……?!」
『お前の大量のねばねばのおかげで身体には当たらなかった。そこだけは感謝するぞ』
「だから、"ベタベタ"だ……!」
自身の粘液の炎に巻かれ床に伏している。トレーボルが体勢を立て直す前にここから逃げるべきだ。
マルーはそう考えて走り出す。
トレーボルの視界から脱したところまで走り抜けた直後、曲がり角でいきなり何かに触られた。
『!?』
見ると、小さい女の子が立っている。自身に触れた右手を出したまま棒立ちでこちらを見ている。
「な、なんだ君は? 子供がどうしてここに……?!」
驚いて声を上げるも子供は反応しない。
マルーを見つめる小さい女の子は、すぐに大きな小さい女の子になった。
『………!?』
私の背が……縮んだ?
状況をうまく飲み込めないマルーが成すすべもなく少女を見上げる。
「人間に危害を加えないこと。ファミリーの命令には従うこと」
『は……?』
「動くな」
意味も分からず少女の言葉を聞いていると、突然身体が硬直した。
少女はマルーを掴み、トレーボルが居る方向へ歩いていく。このままではまた鼻水野郎に拘束されてしまうと焦ったが、自由が利かなくなりどうすることもできない。