第5章 ドレスローザ
『うわーーッ!! 気持ち悪い! やめろォッッ!』
「ん~~……? こいつ身体が流動してやがる。おれのベタベタみたいんねー!」
鳥黐のようなものが身体に纏わりついてくる。
粘液から逃れようと増殖させていた部分をマントの縁まで伸ばすが、飛び出した端からディアマンテの剣の餌食になっていった。
『おい止めろ! ねばねばを取れ!!』
「"ベタベタ"だ!!」
気持ちの悪い粘液を取り払おうと焦ってマルーはマントの中で精一杯暴れるも、一向に状況はよくならない。
抵抗すればするほど絡みつく粘液がいつの間にか身体中を侵食していた。
「あ~あ、マントが台無しだ」
「いいじゃあんねーか、どうせ鉄だろ? 洗えば落ちる」
「そういう問題じゃねェよ。それにしてもこのアメーバの身体……隙間から出てきてキリがねェな」
「そこの棚に海楼石あるぞ。能力で出したアメーバとはいえ身体の一部分……触れれば力が抜けるはずだ」
『…………!』
それを聞いたディアマンテがすぐさま剣先で海楼石の手錠を引っかけてマントの中に落とす。
途端、海楼石の手錠が上に乗ったマルーはぐったりと動かなくなった。
「これでいいな。おれはもう戻る……後は任せたぞ」
無力化したのを確認したディアマンテはマントを摘まみながら帰っていった。
気持ち悪い拘束に絶望しながら床に這いつくばることになったマルーは何とか勝機を探る。
「んねー! んねー! もう終わりだなァ、逃げられないなァ?」
粘液で動けないマルーの顔を覗き込みながらトレーボルが言った。
ディアマンテに切られて辺りに散らばったアメーバが、トレーボルが動くたびに裾の粘液に巻き込まれて引っ付く様子が見ていて不愉快だ。
『……黙れ。ドフラミンゴに会わせろ』
マルーはトレーボルの顔を睨み、吐き捨てるように言った。
「ドフィに会ってどうする気だ?」
『殺す』
「べっへへへへ! お前ごときにドフィが殺せるわけねェだろ!」
手を叩きながら一頻り笑った後、トレーボルは杖をマルーに見せつけた。その杖の本来持ち手であるべき箇所からは、なぜか火が出ている。
『……?』
「この"ベタベタ"は可燃性でな。生き残ると後が厄介だから今のうちに焼け死んだ方が楽だぞォ~~?」
そう告げると、トレーボルはマルーを拘束している粘液に向けて火を飛ばした。
