第5章 ドレスローザ
一体どこへ連行されるんだろうか。途中リフトに乗ったらしき振動があったから、何かの建物に連れていかれているようだ。
マントの中でしばらくマルーがもがいていると、到着したらしく何やら話し声が聞こえる。
「よォ、トレーボル。こいつオモチャにしてくれ」
『(オモチャ……?)』
マルーは会話の意味を探ろうと耳を傾けた。
ディアマンテともう1人、男の声がする。
「ん~~? 直接持ってくるなんて珍しいんねー。そいつ誰?」
「数年前に若が始末したスパイ居ただろ。あいつの仲間らしい」
「ドフィの弟のか! 懲りずにまた海軍がおれ達に寄越してきたんだな。……ベヘヘ、殺さねェのか?」
「身体を再生する能力持ちなんだよ。厄介だからオモチャにした方が早ェ」
「そりゃごもっともだなァ。オモチャにしちまえば忘れ去られるし都合が良い」
ロシナンテはやはりドフラミンゴに殺されたのか……!
マルーはマントから出ようと中で暴れたが、人間の身体でもアメーバの身体でもどうにも出来ない。
『………!! ……………!』
増殖して密度を増やし内側から圧迫して無理やり抉じ開けようともしたが、マントの強度とディアマンテの握力に勝てず自身が苦しくなっただけだった。身じろぎすらできない。
「べへへへ! 今「おのれ!! 殺してやる!」って言ったのかァ? 無様にマントにくるまれてんのに活きがいいじゃんね~!」
マントの外から大笑いが聞こえる。口答えすらできなくなったマルーは悔しさのあまりに、マントの中に満ちた自身をも忌々しく思った。
「んなことより、シュガーはどうした? さっさとおれのマントからコイツ出してェんだが」
「シュガーなら便所だ。ついて来るなっていつも言うからここで待ってる。近くだし何も心配ねェよ」
トレーボルと呼ばれた男の声が近寄ってきた。
「それにマントも、代わりにおれがベタベタで拘束すりゃいいだけだ。どれ、同じように全身くるんでやるとしよう」
「マントにベタベタを付けるなよ」
その言葉と共に、そっとマントが開封される。明るさを感じたのも束の間、謎の粘液がマントの中に流れ込んできた。
『な、何だ……?』
視界を覆おうとする粘液の向こうに、多量の鼻水を垂らした見苦しい男が見える。