第5章 ドレスローザ
王宮の近くまで来たマルーは外壁を見上げつつ、警備が手薄な場所を探して歩いていく。
さっきの人形は午前0時以降完全に無人の街になるというようなことを言っていたが、その時の王宮の警備はどうなっているのだろう。
王宮の守りを無くすわけがないから、おそらく出歩き禁止なのは一般市民だけのはずだ。
そもそも何故夜に屋外から出てはいけないんだ……?
考えるが、今知れる情報からは答えを導き出せなかった。
『(試しに今夜もう一度ここを見に来よう……出歩く人がいないなら警備も薄くなるかも)』
夕方まで目星になりそうな箇所をいくつか確認した後、マルーは宿へ向かい取っておいた部屋で休憩することにした。
ベッドと机と椅子と窓。簡素だが過ごしやすそうな環境に思える。
窓を少し開け、持ってきた海軍支給の子伝電虫にエサと水を与えながら今後のことを練ることにした。
手帳を開き、ドレスローザに関するメモで何か役に立ちそうな情報がないかを探す。
『(リク王家……コロシアムの無敗の英雄……妖精伝説……)』
本を読みながら走り書きしたページはあまり参考にならなそうだ。王宮の見取り図でもあればと思うが、城の間取りが外部に流出するはずもないので無い物ねだりだ。
とりあえず外壁は能力で這って上れるから、夜間バレないように侵入するのが一番シンプルで確実だろう。
もうそろそろ日付も変わる頃だし、後で行ってみるか。
子電伝虫を指先で撫でながら手帳と睨めっこしていると、窓から一陣の風が吹き込んできた。
窓を閉めようと立ち上がったところ、ふと机の上にいるはずの子電伝虫がいないことに気が付く。
『は……?!』
落ちたのかと部屋を見回すも子電伝虫の姿はない。とりあえず脱走防止も兼ねて今すぐ窓を閉めてしまおうと窓枠に手をかけた瞬間、今度は部屋の内側から窓の外へ風が吹いた。
おかしい。
目に見えない何者かが窓から部屋を出入りしたように思えた。
窓の外を確認すると、人通りのない夜の薄暗い道を風呂敷包みが何とも言えない素早さで駆けていくのが見える。
『逃がすか!』
マルーは窓からすり抜けると同時にアメーバ化させた自身の左手をもぎ取り、逃げる影に向かって投げつけた。
空中で表面積を広げ、網のように拡散しながら風呂敷包みに覆い被さる。
『…………』
風呂敷が走るのもオモチャの現象の1つだろうか?
