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【OP】さよなら、My Dear

第4章 友の訃報


誰もいない。
空っぽの小部屋に置かれた2人掛けのソファに腰を下ろす。
将校コートの袖を濡らしながら、持ち場に何時までに戻らなければいけないか、このままでは腫れてしまう目元をどうやって戻るまでに治そうかとぼんやり考えていた。
任務に戻りたくない。まだ立ち直れる気がしない。
項垂れるようにソファに沈み込む。マルーの小柄な身体では仰向けに寝転がっても余りある大きさに感じた。
よくロシナンテと一緒に座ったときにはひどく窮屈なものに思えていたが、今となっては広くて空しくて仕方がない。
『"スライム"……"グローイング"……"モールド"』
アメーバ化させた部分を増やし、隣の座席に集中させる。一瞬でロシナンテを模したものが出来上がったが、その人影は孤独をより一層虚しくさせた。
『ロシナンテ……』
アメーバを蹴り崩して体に戻しながら天井を仰ぐ。
どこもかしこもヤニで汚れている。天井も壁も黄ばんでいて最悪だ。
それに備品に染み付いたタバコの匂いも……。
目を瞑れば、近くにロシナンテがいるように感じられるだろうか。でもタバコは結構たくさんの奴が吸っている。
他人の気配でロシナンテを思い起こしたくない気がしてきて、その感傷の浸り方は止めておいた。
『…………』
親しい人が死んでしまって悲しい。
こんな思いは何度もしてきたはずなのに、何とも言えないやりきれなさを感じる。
生まれて初めて抱いた虚無感に戸惑いを覚えつつ、マルーはロシナンテの弔いに何か行動を起こそうと考えた。
このまま脱力感に苛まれて腑抜けになるわけにはいかない。それこそ望んでいた対等な関係というものが台無しになってしまう。
自分なりの方法でロシナンテの死を受け入れ、割り切らなければならない。そうしないと、どうにかなってしまいそうだ。
ベタだが仇討ちでもするか。ロシナンテが誰かに殺されたのだとしたらそいつを殺しに行きたい。
とりあえず、死ぬきっかけになった潜入捜査とやらについて詳しく知るのがいいだろう。
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