第4章 友の訃報
「ロシナンテは……3年前、任務中に殉職した」
殉職。マルーは覚悟していなかったわけではないが、いざ知らされると血の気が引いていくような感覚に陥った。
不安は思い過ごしだったと安心したかった。またすぐに会えるんだと希望を持ちたかった。
でもそれは叶わない。
目の前のセンゴクが、自分に冗談など言う人ではないという確信すらも絶望に感じた。
『そう……でしたか。お、お悔やみ……申し上げ、ます』
声の震えを抑えながら何とか絞り出したが、言い終わった瞬間に涙がボロボロと溢れてしまった。
『ごッ、ごめんなさ……センゴク元帥、私はこれで、失礼ッ……じまず……!』
立場上、目の前で泣くわけにはいかないと思い止まらない涙を袖で隠しながら慌ててマルーは退室しようとする。
「マルー中佐」
呼び止められ、涙を拭いながら振り返るとセンゴクは哀しげな微笑みを浮かべていた。
「君のことはロシナンテからよく聞いていた。……ロシナンテと仲良くしてくれてありがとう」
憂いで満ちているものの、声には温かみが感じられる。軍人としてではなくロシナンテの友人として言葉をかけられていると察した。
マルーはそこで改めて、この人はロシナンテの親なんだと実感する。
息子同然の存在が亡くなってしまったんだ。友人である自分も辛いが、育ての親であるセンゴクはもっと辛いだろう。
『こちらこそ……。ロシナンテと出会えて、良がったです』
止めどなく流れる涙を拭おうと必死に目元を擦ってからそう返した。
霞んだ視界に、センゴクの優しい笑みが映る。
『では、失礼いたしました。任務に戻ります』
「そうか。よければおかきを持っていくといい」
『お気持ちだけいただきます……それでは』
海軍おかきの袋とセンゴクに一礼して、マルーは部屋を出る。
通路を歩いていくと、見慣れた景色がなんだかとても寂しいものに感じた。きっともう、どこへ行こうとロシナンテには会えないからだ。
もう一生、顔も見れないし一緒に飯も食えないしお喋りもできない。
そう考えると目頭が熱くなり、また涙が溢れ出てきた。
一向に収まらない涙をどうにかしようとマルーは近場の休憩室に入る。