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【OP】さよなら、My Dear

第3章 ドジっ子


煙の匂いがする。
本部内通路で、マルーは曲がり角の先に喫煙中の上官がいるものと思い敬礼の準備をしながら曲がったが、そこには上官ではなく見慣れた金髪がいた。
『おっ、ロシナンテ』
見上げながら声を掛けると、ロシナンテがマルーに気付いて視線を落とす。
「マルーじゃねーか。遠征終わったんだな!」
『ああ。しばらく見ないうちにまた背が伸びたな? そろそろ首を痛めそうだ』
「逆にマルーは全然伸びないな……おれの座高くらいか」
しゃがみながら目線を合わせるロシナンテの肩をマルーが軽くどつく。
『バカにするなよ。さすがにそこまで差は開いてない』
「はは、すまんすまん」
笑いながら近くの休憩室まで移動し、ソファに隣り合って座った。
『ところで……吸うようになったんだな、タバコ』
マルーが指差しながら言う。たしか前に会ったときはヤニ臭とは無縁だったはずだ。
「おう。上官から勧められたんだ」
そう答えながらロシナンテは箱からもう1本引き抜き、マルーに差し出した。
「お前も吸うか?」
『………』
目の前の白く細い棒はみんながよく吸っている嗜好品だ。マルー自身は吸ったことがなく、興味もなかったので今まで手を出したことがなかった。
『……試してみるか』
煙たさに気管支の違和感を覚えたけれど、友人から差し出されたそれを断る理由は思い浮かばない。
上官たちがしていたような手付きを真似て指に挟むと、ロシナンテがライターを取り出し着火した。
先端の紙と葉に燃え移り、立ち上る煙とともに少しずつ灰に変わっていく。
「ほら、ここを咥えて吸うんだ」
くゆるのを見つめるだけのマルーにロシナンテが助言する。フィルター部分をそっと口に運び、おそるおそる吸い込んだ。
『……ッゲホ! ゲホ、ゴホッ!』
途端、激しくむせてタバコを吸うどころではなくなった。
「ははは、やっぱ最初はそうなるよな」
その様子を見たロシナンテが少し嬉しそうに笑う。おそらくロシナンテも上官と吸ったとき同じように咳き込んだのだろう。
『フザけんな。苦しいだけじゃないか』
「まあ、慣れだ。何回か吸ううちに平気になるぞ」
マルーは再度吸う気にはなれずに灰皿に灰をトントンと落としていく。
こんなものを常時スパついてる奴らの気が知れんな、とご機嫌ナナメ気味に溜め息を吐いた。
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