第7章 おまけ
2人を無事に船まで運びきったマルーが深く息を吐く。
『ああ~~やっと着いた……』
「すまねェマルー、本当に助かった」
マストの辺りに座らせられながらロシナンテが労いの言葉を掛けた。
『………疲れた。ちょっと休憩させろ』
抱えたままのローの背中を撫でながらマルーがへたり込み、ロシナンテの胸に頭を寄せる。
寄りかかりながらも、体重を掛けないよう軽く当てる程度に留めた。
マルーとロシナンテに挟まれたローが居心地悪そうに2人を見上げる。
「な、なあ……もう離してくれよ」
『嫌だ。アメーバを動かす気力もない』
目を閉じたままマルーがローの要求を拒否した。一蹴されたローは仕方なしにその場で大人しく待機する。
疲労を抑えようとする静かな深呼吸が頭上からしばらく聴こえていた。
「…………コラさんとおれを助けてくれてありがとう。……マルー」
『いいってことよ。私もお前とロシナンテを助けられて満足だ』
マルーが薄目を開けてニヤリと笑って返す。それから、ローとロシナンテをまとめて抱き締めた。
「うッ。苦し……」
「いてて」
呻く2人を構うことなくマルーがそのままの体勢で安堵の溜め息を吐く。
『……お前たちが生きてて良かった』
ロシナンテと、ロシナンテが大事にしてる子供が無事で安心した。私が来ても来なくても生き延びていたかもしれないが、北の海まで直接会いに行って本当に良かったと思う。
遠くで心配するだけなんて耐えられない。こうして合流できただけでも、海兵としての何もかもを放り出して駆けつけた甲斐があった。
『ふぅ……まあまあ落ち着いたな。こんな島さっさと出よう』
一頻り抱き締めて満足したマルーは、ロシナンテとローを解放して立ち上がり2人を置いて船内へ歩いて行った。
「コラさん……あの人あんたと同じくらい奔放だな」
「そうか? まあ昔より活き活きしてる気はするが」
そんなことを言っていると、マルーが船内から戻ってきた。両手に毛布と外用薬が入った箱を抱えている。
『おい、ロー。ロシナンテの手当てできるか?』
「え……あ、ああ。任せろ」
『いい返事だ。頼んだぞ』
マルーは救急箱を受け取ったローの頭を帽子越しにワシャッと撫で、毛布をロシナンテの近くに置いた。