第7章 おまけ
しんどそうな顔で無理に微笑んでいる。再度立ち上がろうとしたが、本当にもう力が入らないみたいだった。
「おれは後で追うからよ、2人だけで先に行っててくれ。……となり町で会おうぜ」
その場で座り込んだロシナンテがマルーとローを見つめて言う。
「こ、コラさん……?」
「ローを頼んだぞ。マルー」
何が言いたいのか分かる。歩けないロシナンテをここに置いて2人でさっさと逃げろ、というわけだ。
3人まとめて見つかるよりかは犠牲を1人だけにする方がマシだろう。ロシナンテの判断は正しい。
『…………』
マルーはローを抱き抱えたまま、ロシナンテの顔に手を当てた。
『……本気で言ってるのか?』
「ああ、心配するな。2人とも無事に逃げろよ」
それを聞いてから、マルーはロシナンテの頬をそっと撫で……そしてグーで殴った。
「ブエッ……!」
『何言ってんだバカ!! お前も一緒に行くんだよ!!』
マルーはロシナンテの腕を掴んで懐に潜り込み、その勢いのまま背負い込んだ。
『重たッ……』
ロシナンテの上半身の重量がマルーの背中に伸し掛かる。支えきれずにマルーの膝がガクッと下がった。
「おッ、おいマルー! 無理すんな!」
『ぜ……ハァ……ッぜ、全然、重くないんだが!!?』
「なあ、おれを下ろせよ! おれ1人で歩けるから……」
『ハァ、ハァ……お前みたいな細っこいチビガキなんて羽毛より軽いんだが!!??』
ロシナンテとローが間のマルーを心配して下ろせ下ろせと合唱する。
脚は重みに耐えかねガクガクと震え、肺さえ潰れそうな圧迫感に呼吸もままならなかったが、マルーの心はもう決まっていた。
『うるせーーッ!!! 私はなァ!! お前たちを助けに来たんだよ!!! 2人揃ってなきゃ気に食わねェから2人同時に運ばせろ!!!』
反論しながらマルーは無理やり足を踏み出して一歩一歩進んで行く。
ローを抱え、ロシナンテを引きずり、係留させた場所まで戻る頃には2人もすっかり諦めてマルーに掴まって大人しくしていた。