第16章 自覚は本人の前で
まさか、本人の前で自覚するなんて。きっと顔が赤いのもバレているだろうし、恥ずかしすぎる。
家に向かって歩くという目的があるだけマシだ。やる事があると、少しだけだけど気を紛らわせる事が出来るから。
奈緒も奈緒だ。気づいたんなら教えてくれてもいいじゃんか……!
ああでも、病院に行くなと言ってくれたのは感謝してる。ありがとう奈緒。
私たちの間に沈黙が訪れた。何を喋ればいいのか分からない。
普段は沈黙は気にならないし、寧ろ心地いい時だってあるんだけど、今だけはこの静かな状況が怖い。
何なら今は私たちしか周りにいないから、それが静けさに磨きをかけている。
先に沈黙を破ったのは、鳥束くんだった。
「……俺、自惚れてもいいんスか?」