第16章 自覚は本人の前で
「……それ、どういう時にっスか?」
私は、その症状が出てくる時を思い返してみる。
「鳥束くんと話してる時とか、考えてる時だなぁ。友達に鳥束くんに聞けば解決するって言われたんだけど、理由分かる?」
鳥束くんを見上げてみると、彼は口元を手で押さえていた。
「……鳥束くん?」
よく見ると彼の顔が赤い。どうしたんだろうか。
「あー、あの、それって」
言いにくそうに、鳥束くんは言葉を切る。
「……俺の事好きみたいに、聞こえるんスけど」
鳥束くんの言葉が耳に入り理解した瞬間、私の頭に稲妻が走った。
心臓がうるさい、おかしいって言うのは、ドキドキしているとも言い換える事が出来る。相手の事を考えると──なんて、定番のやつだ。
何でそんな簡単な事が、頭から抜けていたんだろうか。
そりゃあ、奈緒もあんな顔をするわけだ。
初めて心臓が『おかしく』なったのは、彼の笑顔を見た時だった。
あの日から、私は。
私は──鳥束くんの事が、好きなんだ……。