第16章 自覚は本人の前で
奈緒の時間が再び動き出すまで、たっぷり十秒かかった。
「あー……アンタそういうタイプなのね……」
「そういうタイプって?」
「何でもない」
奈緒はこめかみを押さえる。そんな彼女に、私は相談を続ける。
「一緒にいる時だけじゃなくて、鳥束くんの事を考えてる時にもおかしくなるの! 何か身体も熱くなるし! これって病気だよね!?」
机を叩き自身の不調を訴える私に、奈緒は信じられないものを見る目を向けてきた。奈緒がこんな顔をする理由が分からない。
「まだ治ってないから、今度病院に行こうと思ってる」
「は!?」
私がそう言った瞬間、目を見開いた奈緒は私の肩を掴んだ。
「それは、絶対にやめた方がいい」
「えぇ? 何でよ」
「そんな事しなくても、アンタの悩みなら鳥束本人に聞けば解決するから」
まるで医者のように解決策を教えてくれる奈緒。
「……分かった」
私は半信半疑ながらも、奈緒の言う通り鳥束くんに相談してみる事にした。