第9章 雨が降る日に限って傘が無い
よし、鳥束くんを探すためにそこら辺を歩いてみよう!ㅤそう思いながら洗面所の扉を開けると、目の前にびくりと肩を揺らした鳥束くんがいた。
えっ、何でいるの?
「名前さんに部屋を案内し忘れてたんで、いつアンタが出てきてもいいようにここにいたんスよ!」
「そうなの?」
私が疑問に思っているのが伝わったのか、彼は聞いてもいないのに教えてくれた。
「別に、シャワーの音を聞いてたとかじゃないんで!ㅤほんとに!」
「全部言ってるんだよなぁ」
鳥束くんが私のシャワー中にずっとここにいたであろう事が分かった。その理由が不純すぎるのが問題だ。
まぁ、鳥束くんが寒がっている私を助けてくれたのは事実だし、あまり責めるものではないかもしれない。
鳥束くんも体が冷えているだろうし、ここは長話はせずに、彼にもすぐお風呂に入ってもらおう。
「うんうん、いいからお風呂入って!ㅤ私のせいで鳥束くんが入るの遅れちゃったから」
「はい……」
心做しかしゅんとしている鳥束くんを見送る。
彼がさっきまでいたのだろう、襖が開いていたから、私はその部屋で待たせてもらう事にした。