第9章 雨が降る日に限って傘が無い
鳥束くんが戻ってくるまでの間、私は床にぺたんと座り込んでいた。特にやる事がない。
ぼーっとしていると、うっすら水音が聞こえてきた。
これが……あれか、さっき言っていた『シャワーの音』……。
少しドキッとしてしまった。鳥束くんがもじもじしていたのも分かる気がする。
平常心平常心……!
「いやー温まりましたね!」
襖を開けっ放しにしていたから、私に気がついた鳥束くんも部屋に入ってきた。
声を聞き俯いていた頭を上げると、鳥束くんと目が合った。
彼は、いつもつけているバンダナを外していた。お風呂上がりなんだから当たり前だ。それに、雨でバンダナが濡れているだろうし。
普段はバンダナで上がっている前髪が下ろされている。
その姿に、胸が高鳴ってしまった。
「えっ、と……そうだね。お風呂ありがとう」
「これで風邪は引きませんね!」
さっきまでしゅんとしていた鳥束くんは、どうやら持ち直したらしい。にこにこしながら私に話しかけてくる。
鳥束くんって、結構カッコいいんだよな……。
乾燥機が終わるまでは帰れない。
こんな調子で、無事に乾燥機が終わるまでの時間を過ごせるのだろうか。
この後何があっても対応出来るように、私は深呼吸をした。