第9章 雨が降る日に限って傘が無い
「冷たっ」
シャワーのノズルを捻ってお湯を出したつもりが、一番風呂だからかまだお湯が温まってなかった。
この辺りは、どこの家庭も同じなんだろうな。
豪快に腕に水を浴びてしまった。こういう失敗をしたのは久々だ。
確認がてら指先にだけお湯を当てる、みたいな確認をしなかった事を後悔しながら、私はお湯が温かくなるのを待つ。
お、そろそろいいかな?
水を浴びて冷たい目にあった腕から、お湯を当てる。
あーあったかい……。
お湯は少し熱かったが、雨で冷えた体にとっては心地良かった。
体を温めるのが目的だから、シャンプーやリンスは使わなくてもいいかな。
軽く髪を濡らして、もう一度お湯で体を温めてから、ノズルを捻ってお湯を止めた。
「ふぅ……」
大分温まれた。体がぽかぽかしている。
風呂場から出る時に、ここはいつも鳥束くんが使っている所なんだと考えてしまった。
途端に変な気分になる。
私はその考えを打ち消すように、首を振った。