第9章 雨が降る日に限って傘が無い
「風呂場まで案内しますね、先入ってください」
そう言いながら、鳥束くんは歩き出す。
私は鳥束くんの後ろについていった。
きょろきょろと辺りを見回しながら歩いていると、いつの間にか風呂場に到着したらしい。
鳥束くんは振り返り、洗濯機をぺちぺちと叩く。
「乾燥機付いてるんで、制服はこん中に入れてくださいね」
「分かった」
「今、服用意してきます!」
急いでくれているのか、バタバタと足音を立てながら、鳥束くんは服を取りに部屋へと消えていった。
しばらく待っていると、鳥束くんが戻ってくる。
手には丸首のシャツとズボンを持っていた。シャツは長袖だ。
「はい、どうぞ!」
「ありがとう」
シャツを受け取ると、鳥束くんは何故かもじもじし出す。どうしたんだろう。
「えーと、じゃあ、俺部屋で待ってますね……」
「え?ㅤうん」
そう言い残して、鳥束くんは風呂場を後にした。
風呂場の近くは洗面所になっており、私はそこで服を脱いだ。勿論、扉を閉めてからね。
脱いだ制服と靴下を洗濯機の中に入れる。
鳥束くんも私の後に入るだろうし、電源はつけなくても良さそうだ。
鳥束くん、寒がってる私に気を使ってくれたんだろうな。
優しさを感じて、頬が緩んだ。
それと同時に、申し訳なくもなる。
さっさと入ってバトンタッチしよう。
私は風呂場の扉を開けて、中に入った。