第1章 Ψ高の文化祭
文化祭当日。
「あ」
注文された品をテーブルに運んでいると、視界の隅に見知った顔がうつった。
「これ、指名って出来ます?」
「え、は?ㅤし、指名?」
とんでもないことを言い出し、座席へと案内しようとしたクラスメイトを困らせている客──名前さんだ──は、扉に近い座席に腰掛けていた。
やっぱり来たな!ㅤこの後の展開を想像して、俺は思わず顔を顰める。
俺を探すためなのか、名前さんにとっての天国を味わうためなのか、彼女はきょろきょろと店内を見渡していた。
にやにやしているから後者のような気もするが、見つかってはまずい気がして、給仕を終えそそくさと奥へ引っこもうとしていた俺を、名前さんは目ざとく見つける。