第9章 雨が降る日に限って傘が無い
「くしゃみしてたじゃないですか。雨宿りも兼ねて……どうです?」
ここから家まで近いんで。
鳥束くんはそう言いながら、案内するためなのか私よりも半歩先を歩き始めた。
どうしよう。
ここから鳥束くんの家が近いのならば、ちょっと寄らせてもらっても大丈夫だろうか。私の家までは、まだしばらくかかる。
正直に言うと、体が冷えてとても寒いから、暖まれるのはありがたい。
家に寄るのはどうなのだろうかとは思うものの、ここはお言葉に甘える事に決めた。
「じゃあ、その……お邪魔します」
「そう来なくっちゃ!」
振り返った鳥束くんは、楽しそうに笑った。