第9章 雨が降る日に限って傘が無い
「名前さーん!」
背後から声が聞こえる。鳥束くんだ。
カバンを頭上に掲げながら、鳥束くんはこちらへ駆け寄ってくる。
「傘持ってませんか!?」
「あー……持ってないや」
私がそう言うと、彼は残念そうな顔をする。
多分鳥束くんは、私に傘を借りるか、私と一緒に傘に入るつもりだったんだろう。
「マジか……。名前さんなら持ってるかと思ってたんスけど……」
「家にあるなぁ」
私も持って来てるかと思ってたよ。なかったけど。
立ち止まっていても濡れるだけだから、私たちはどちらともなく歩き出した。
「名前さんがダメなら、誰も傘なんて持ってないでしょうね」
辺りを見回すと、PK学園の生徒が何人かいるのが分かった。
彼らは諦めて濡れる事を選択していたり、突然の雨に慌てている。
確かに、この雨に対応出来ている人は少なかった。
「それは大袈裟だと思……くしゅんっ!」
体が冷えたのか、くしゃみが出てしまった。
鳥束くんが私の事を見てくる。くしゃみをした後だから、少し恥ずかしい。
「……家来ます?」
「えっ?」