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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第9章 雨が降る日に限って傘が無い


「うわ……」

鼻の頭に水滴が落ちてきたかと思ったら、急に雨が降り出した。大雨だ。
傘を出す暇もない。一瞬で体がずぶ濡れになってしまった。

折りたたみ傘を持ってきていたはず。
探しやすいように立ち止まってから、私はカバンを開いた。

がさごとと中身を漁るが、一向に折りたたみ傘は出てこない。
こうしている間にも体が濡れる。私は身震いした。

「な、ない……」

ここで、昨日の記憶が蘇る。

そうだった、思い出した。

昨日は曇っていて、雨が降りそうだった。
買い物へ行くのに普通に傘を持っていくのを渋ったお母さんに、私は自分の折りたたみ傘を貸したんだ。

返してもらった記憶がない。
家にあるってことじゃん……。

私は途方に暮れる。

いや、こんな所で立ち止まっている場合ではない。
傘がないのならば、尚更さっさと家に帰るべきだろう。

私は小走りで家までの道を進む。
いつもカバンに折りたたみ傘を入れているのに、どうしてこう、必要な時に限って持ってないんだ!

心の中で嘆いた。
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