第7章 せめて、この痕がある間は
「持ってきましたよー」
部屋に戻ると、名前さんは机に突っ伏して眠っていた。
自分も課題を進めつつ、俺に教えてもいたから疲れてしまったのかもしれない。
だとしても。
「……無防備すぎっスよ」
男の部屋で眠っちまうなんて。
眠ってもいいと思えるくらい信頼されているのかもしれないが、それはそれで、どこか複雑だ。
俺がアンタの事を想ってるなんて、アンタは知らないんだろうな。
「…………」
お茶とお菓子の乗ったお盆を、机の上に置く。
俺は思い切って、名前さんに唇を落とした。
聞こえていなくてもいい。
「……好きです」
俺は、そう呟いた。
名前さん相手だと、なぜかグイグイいけないのだ。奥手になってしまう。
寝ている相手に告白なんてドラマか何かみたいな事を、まさか自分がする事になるとは。俺は苦笑した。