第5章 優しさに触れ
「お待たせしました!」
鳥束くんの声が聞こえた。
私は、慌ててシートから起き上がる。
今の見られちゃったかな、恥ずかしい……。
鳥束くんを見ると、彼はその手に服を持っているようだった。
「これは?」
「海にいる間、着てていいっスよ。まぁ俺のなんで、無理にとは言いませんが……」
鳥束くんは、やんわりとした笑みを浮かべる。
私はパーカーと鳥束くんを交互に見ながら、
「私が着ちゃっていいの?」
と聞いた。
「俺は着ないんで大丈夫っスよ。それに、名前さん困ってるんでしょう?ㅤ俺の事は気にせず使ってください」
ここまで言われたら、断るのも……。
それに、これで人の目を気にしなくて済む。正直、とてもありがたい。
「ありがとう……!」
お言葉に甘えて、私は鳥束くんのパーカーを使わせてもらうことにした。
二人で話し合って、バスに乗る前か、それが難しそうなら学校に帰ってきてからパーカーを返す事に決めた。