第5章 優しさに触れ
鳥束くんと話してから数分が経った。
辺りはやはり、この海を楽しんでいるクラスメイトや観光客の声で騒がしい。
声は少しうるさく感じるものの、水音はそれなりに心地よかった。
ばしゃばしゃと響く音に耳を傾けつつ、私は鳥束くんが何をしに向こうへ走って行ったのかを考える。
もしかして、浮き輪でも持ってきてくれるのかな。
少し考えてみたけれど、答えは出なかった。
ずっと考え事をしているのは、体を動かしていなくてもそれなりに疲れるものだ。
私は、ビーチパラソルの下に敷かれているシートの上に寝転んだ。
砂浜で寝転ぶのって初めてだな。
太陽が当たっている砂浜は、シート越しでも少し熱かった。
当然と言えば当然だけれど、海にあまり行ったことのない私からすれば、それも新鮮だ。