第5章 優しさに触れ
「水着、似合ってますね。可愛いっスよ」
「あ、ありがとう」
言われ慣れていない『可愛い』という言葉に、私は戸惑う。
「鳥束くんも、似合ってるよ」
これは本心。
本当はカッコいいとも思ったけれど、それを言うのは恥ずかしかった。
「嬉しい事言ってくれるじゃないっスか!」
本当に嬉しそうに言うものだから、つい私も笑顔になる。
「そういえば……さっきすげぇ辛そうな顔してましたけど、どうかしたんスか?」
「あー……えっと、実はね……」
上着を忘れた事、人前で肌を出すのが苦手な事、あとついでに泳げないから暇していた事も話す。
思えば、家族以外にこの話をするのは初めてかもしれない。
話し終わった後鳥束くんの顔を見ると、彼は何やら考え込んでいる様で、
「多分持ってきてるはず……」
なんて呟いている。
私がキョトンとしていると、彼は私に向かって笑顔で、
「ちょっと待っててください、いいモン持ってくるんで!」
と言い、どこかへ駆け出して行った。