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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第5章 優しさに触れ


夢原さんとはここで一旦別れて、私は一人歩く事にした。

誰かと泳ぐ事も出来ないし、同じグループ同士で固まっている事が多いから、ビーチサイドで話をするのも難しそうだ。

ううん、思ってたより暇だなぁ。

素肌が出ているから落ち着かない。

誰に見られているわけでもないけど、人の目が気になって仕方なかった。

私はいつしか歩く事をやめて、ビーチパラソルの下に座っていた。

こうして縮こまっていると落ち着く。

海の色がとても綺麗で、そこで遊んでいるクラスメイトたちは楽しそうだった。

青春って感じがする。

まあ、その青春とやらに、ここで一人座っている私は含まれていないのだけれど。


「え、名前さん?」


だからきっと、この私を呼ぶ声も幻聴か何かだ。一人が寂しくて、無意識に話し相手を欲しがっているみたいなそういう。

「名前さん!ㅤちょっと、聞こえてますよね!?」

うん……幻聴にしては、やけにはっきり聞こえる気がする。

振り返ってみると、そこには鳥束くんがいて──。


「──とり、つかくん」


どうしてここに?ㅤと聞こうとしたけれど、私のその言葉は声に出す事が出来なかった。

息を飲む。

初めて見る、鳥束くんの水着姿。

シャツとかを着ていないから、素肌が見えている。

普段は見る事の出来ない胸やらお腹やらが目の前にあるから、これは……結構やばいかもしれない。

私は咄嗟に目を逸らした。
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