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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第32章 一人前のミルクティー


家の近くに自販機はあるけど、外は暑いから自販機まで歩くのもなぁ……。

おにぎりを食べつつそんな事を考えていると、私を眺めていた零太が、
「じゃあ、俺のちょっと飲みます?」
と言った。

「えっ」

まさかそんな提案をされるとは思っていなかった私は、おにぎりを落としそうになったのを何とか堪える。私の両手は、しっかりとおにぎりを掴んでいた。

私の反応には特に触れずに、零太は立ち上がり買ってきたお弁当を手にキッチンへと向かって行った。えっ、私スルーされてる?

「電子レンジ借りますね。弁当温めます」

慣れた手つきで、零太は電子レンジのボタンを押してお弁当を温め出した。
私の家にある家電を慣れた手つきで操作してる……って、何か良いな……。こう、あの、同棲してる感が出るというか……。

「なにニヤニヤしてんスか?」

いつの間にかリビングに戻ってきていた零太に指摘される。
私は、零太に顔を覗き込まれていた。
気づかなかったな……。それだけモニャモニャとした妄想で頭がいっぱいになっていたのだろう。

「……ニヤニヤしてた?」

「してましたね」

「マジか……」

……私は、思っている事が顔に出やすいタイプなのかもしれない。

自分の頬を手で押さえてみる。ちなみに、左手は勿論おにぎりを持っている。おにぎりを落とす訳にはいかないからね。

「ほら、どうぞ」

頬を軽く引っ張っていると、顔にペットボトルを当てられた。

「冷たっ!?」

「まあ買ってきたばかりですし」

悪戯が成功した時みたいに無邪気に笑う零太に、心臓が跳ねる。

「飲まないんスか?」

零太にそう聞かれて、
「の、飲むっ!」
私は慌てて答えた。
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