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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第32章 一人前のミルクティー


「今ここにあるのは、一人前のミルクティーなんだよね」

「なんスか突然……」

ビニール袋から買ってきた物を取り出してテーブルの上に置いていた零太は、手元の品物から私に視線を移した。

「一人前てなんスか? ミルクティーに立派とかあったけか……」

「そうじゃなくて」

一人前ってそういう意味じゃない。
謎のボケを挟んできた零太は、ミルクティーの蓋を開けて中身を飲んだ。

私はペットボトルの中身が減るのを見届ける。そのままストンと椅子に座り、自分のお昼ご飯になるおにぎりのつまみを触った。

「私が言ってる一人前は、一人分って事だよ。私もミルクティー買えばよかったなって」

「あー、そういう」

ペットボトルを置いて私の隣に座る零太を視界の隅に入れつつ、私はパッケージを外しておにぎりを頬張った。
うん……美味しい。やっぱこれだね。


──今は夏休み。零太と外で遊んでいたが、あまりの暑さに予定を変更。コンビニでお昼ご飯を買って、午後からは私の家でまったり過ごす事になったのだ。

あの時、零太に何か飲み物を買うかと聞かれた。それに対して私は、「家で麦茶飲むからいいや」と答えたのだが……嗚呼、今になってミルクティーが飲みたくなるなんて!
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