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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第29章 急展開のラブコメディ(当社比)


待て待て待て! 私が超能力者であると幽霊に教えてもらって、私の家に押しかけてきたあの鳥束だよ!? しかも『師匠になってくれ』なんて言われたし!
アイツにときめくなんて、そんな事、あるわけが……!

内心の動揺を悟られないようにするべく、私はいつも通りの表情を保とうと必死だった。

鳥束に手渡された教科書をパラパラ捲り、目的のページに辿り着く。

……うん、何とか頭は働く。問題を解く事が出来そうで、私は一先ず安堵した。

「えっと、これの解き方は──」



問題を教え終わり、鳥束のノートが埋まった。
教えている間、隣に座る鳥束をやけに意識してしまい落ち着かなかったが、そんな状態で教師役を全うした私は褒められるべきだろう。

「助かりました、ありがとうございます!」

そう言った鳥束は一瞬迷ったような表情を見せたあと、突然私の手を握ってきた。

「え、は?」

無意識のうちに声が漏れる。

「なんの冗談……」

その後に続けるつもりだった言葉は、いつになく真剣な表情をした鳥束を見たことによって掻き消えてしまった。

ああ、心臓がうるさい。もう、認めるしかないのだろうか。

鳥束の事が、気になってしまっているのだと──。
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