第28章 関Ψ弁少女と霊能力者
暫く廊下を歩いていると、ふと、トントンと肩を叩かれた。
苗字が振り返ると、そこには見覚えのない男子生徒がいた。
彼はにこにこと笑顔を浮かべている。
バンダナをつけた紫髪の男子生徒は、苗字に、
「君が巛組の転校生っスか?」
と聞いてきた。
転校生がやって来る。その情報がこんなに早く回るものなのかと、苗字は少し驚いた。
こういう情報は、一体誰がどこから入手するものなのだろうか?
「そうやけど」
別に否定する意味もないため、苗字は素直に頷く。
声を出した苗字の、その口調を聞いた男子生徒は、
「方言女子来たーー!!!」
と、そこそこ廊下に響く声で叫んだ。
「えっ何なんこの人……」
突然の大声に、苗字はびくりと身体を跳ねさせる。
一言しか会話を交わしていないにも関わらず、苗字は確信していた。
ああ、多分これ、変な人だ。
苗字が自身を警戒している事に気がついたのだろう。鼻息を荒らげていた彼は姿勢を正し、コホンと咳払いをした。
「あー、取り乱しました。俺は隣のクラスの鳥束零太っス!」
「はぁ、どうも」
「実は、俺も転校生なんスよー!」
紫髪の男子生徒、鳥束零太と名乗った彼は、苗字の片手を取りブンブンと振った。初対面でこれやる人いるんやな、と、ぼんやり考える。
どうやら、彼も転校生らしい。いつ転校して来たのかが気になった苗字は、その時期を聞いてみることにした。
「へぇ、いつ頃転校して来たん? 自分も二年の二学期から?」
「いや、俺は結構前からっスよ。二年の二学期からですね」