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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第28章 関Ψ弁少女と霊能力者


「……二年の二学期」

苗字は何処となく違和感を感じたが、
「同じ転校生同士ですし、仲良くしましょうよ!」
鳥束が喋った事により思考が遮られ、その違和感が形になる事はなかった。

「俺、君と仲良くなりたいんスよ」

鳥束は苗字の手を取り、指を絡める。

「……自分、距離感バグっとるって言われへん?」

苗字は呆れたように言う。鳥束はギクリと身体を強ばらせた。
手を取りブンブンと振った時は特に彼女は何も言わなかったため、このくらいならばやっても大丈夫かと思ってしまった。

「は、ははは……」

鳥束は苗字の手をパッと離す。

「ま、まあとにかく! 転校したばかりだと移動教室とか大変だろうし! 校内探検しましょうよ!」

ね! と念を押す。距離感を指摘された事を、彼はゴリ押しで何とかしようとしていた。

「…………」

苗字はずっと黙っていたが、ふと動き出した彼女は、鳥束の肩に片手を置いた。

「校内探検は別にしてもええけど。手ぇ繋ぐんとかって、もっと仲良うなってからするべきやろ?」

何処か妖艶にも見える笑みを浮かべた苗字は、鳥束の肩から手を離し、教室へ戻るべく歩き出した。

振り返った彼女は、
「私の名前言うてなかったな。苗字名前……まあ、機会あったらよろしく」
と言った。

廊下には、鳥束だけが残される。

彼女の後ろ姿を眺め鳥束は、
「……いや、カッコよすぎだろ……」
と呟いた。

彼の頬は赤く染まっている。苗字は、彼に強い印象を残したのだ。


──その後。苗字としてはあしらうために言った『機会があったらよろしく』との言葉を本気にした鳥束が、苗字に絡んでいくのだが……それはまた、別の話だ。
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