第27章 混浴は恋人の必須イベント
ゆっくりと、狭いお風呂場の中を歩く。
「お先にお湯浸かってます」
そう言う零太くんとばっちり目が合ってしまい、私は目を逸らした。
この零太くんは、直視出来ない。濡れた身体が色気ありすぎるんだよなぁ……!
これは煩悩? それとも、ただただ恥ずかしいだけなのか……。
少し考えたけど答えは出なくて、私は傍に置いてあるお風呂場用の椅子に腰掛けた。
「名前さんの身体、俺が洗いますよ!」
零太くんのテンションは見るからに上がっていた。
楽しそうな彼とは対照的に、私は俯き縮こまる。
「い、いや、自分で洗えるよ! ……今の零太くんを直視出来ないから、洗われるのはちょっと困る」
私がそう言った瞬間、零太くんは勢いよく立ち上がり、椅子に座る私の近くに移動した。
「わっ!? 待って無理無理無理!」
騒ぐ私を無視して、零太くんは私の背後に回り込んだ。私の肩に手を置き、ぐっと顔を近づける。
「俺の裸なんて見慣れているでしょう?」
「それは……そう、だけど……」
彼の吐息が耳にかかり擽ったい。少し掠れた声で囁かれ、私は頷く事しか出来なかった。
「という訳で、このままじゃ洗えないんでタオル解いてください」
うっ……まあそうなるよね……。
ここでごねても一生このままな気がした私は、観念してタオルを解いた。背中が晒される。
せめてもの抵抗で、私は自身の身体の前にタオルを持ってきて、少しでも彼に身体が見えないようにした。