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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第25章 大学終わり、君との時間


「はっきり見える人って中々いませんからねぇ、苗字さんに会えて嬉しいっスよ!」

公園のベンチ、私の隣に座る少年──鳥束零太というらしい──は、本当に嬉しそうにしていた。


鳥束くんはPK学園に通う二年生。
エロ本が先生に見つかり、取り上げられ、ついでに説教までされてしまい落ち込んでいたらしい。……ちなみに、普段なら見つかるなどというミスはしないのだとか。油断でもしていたのだろうか。

幽霊曰く落ち込んでいるとの事だったが、まさかこんな理由だったとは……。
下着を見たら元気になるなんて言うのも、落ち込んでいる原因を知った今は、本当に元気になるんだろうなぁなんて思ってしまう。彼は、冗談ではなく本気で言っていたのだろう。

取り調べが終わり気が済んだ私は、ただ一言、
「エロ本読むな高校生」
と彼に言ったのだった。


取り調べが終わってからは、何となく私からも自己紹介をした。それをきっかけに、ぽつりぽつりと雑談が始まった。

霊能力を持っているが故の幼少期エピソードなど、彼とは通じる話があり、時折『あるあるだよね』と頷いたり、私から昔の出来事を話したりなど、会話はそこそこ盛り上がった。

はじめは取り調べをするために公園に鳥束くんを連れてきたのだが、いつの間にか普通に会話を楽しんでいる自分がいる。

今まで身の回りに霊能力を持っている人間がいなかったからこそ、これまで話せなかった事を共有出来るのが、私にとって、新鮮で、幸せに感じるのかもしれない。

間近で彼の顔を見ていると、とても綺麗な瞳をしているのが分かる。
梅雨に入り、顔を出してきた湿気が身体に纏わりつくが、彼の澄んだ瞳を見れば、湿気の不快感が消えてしまう。

そんな綺麗な瞳をしている鳥束くんだが、会話の節々に感じるこの、何とも言えない感じ──もしかしてこの子、変な子なんじゃない? みたいな──そういうものが彼にある気がして、私は体験した事のない不思議な感覚に身を捩った。
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