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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第25章 大学終わり、君との時間


幽霊には実際に触れられるわけではない。私の蹴りは幽霊の身体を通り抜けた。

二十代くらいに見える、私のスカートの中を覗こうとした幽霊が驚いた顔をする。

「俺の事見えるの!?」

「それ以外にまず! 私に言う事は!?」

「ごめん! いやぁ、あそこにいる男の子があまりにも落ち込んでてさ。女性の下着の色を知ったら元気になるって言うから……」

あそこ、と言いながら、幽霊は公園を指さした。それと同時に、一人の少年が公園からこちらへと駆けてくる。

「おーい、遅くないっスかぁ? って何だこの状況!」

ワイシャツの第一ボタンはとめておらず、中に着ている丸首シャツが見えている。そんな何処となく緩い格好をした少年は、私を見てそう叫んだ。……いや、彼は私の隣にいる幽霊にも視線を向けていた気がする。もしかして視える子なのだろうか。

あの子が『女性の下着の色を知ったら元気になる男の子』なのかどうかという疑問は、
「あっ、あの男の子だよ、知りたがってたの!」
との言葉により解決した。犯人はあの子だ。

「ていうか……アンタ、視えるんスか?」

「視える」

視えるからこそ、妙な事をしようとした少年と話をしたいのだ。取り調べの時間である。

「……因みに、どんな風に視えるんスか? ぼんやりとかくっきりとか」

「はっきり見えるよ。ぼやけてない」

私がそう言うと目の前の少年は、
「そうなんスか!?」
と、顔を輝かせた。
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