第22章 ほうきは意外に幅を取る
ロッカーは狭い。それはもう、物凄く狭い。
ロッカーそのものが狭いのもあるが、ほうきが入っているスペースに無理やり入り込んだのもあり、それが余計に圧迫感を煽る。
背中にほうきが当たるため、これ以上は鳥束との距離がとれない。
ほうきは意外にスペースをとるのだなと、いらない知識が増えてしまった。
ほうきに苦しめられているのは鳥束も同じなのか、しきりに身体を動かして──動かして。
いや、これは。
「何で身体を押し付けてくるかな」
「こうでもしないとやってらんねーっスよ! せめて美味しい思いしたいじゃないっスか!」
いつも通りの鳥束で何よりだが、身体を押し付けてくる行為を許してはならないだろう。
何とか腕を背中に回し、私はほうきを掴んだ。
身体を出来るだけずらして、ほうきを前に持ってくる。
まるで剣のようにほうきを装備した私は、
「そっちがその気なら、私だって抵抗するからな!?」
と、声を張り上げた。
「あー分かりましたよ、俺も俺のしたい事をします!」
最早隠れたいなんて本来の目的はどこかへ行ってしまったのか、抵抗する私とそれを阻止したい鳥束の戦いが勃発した。
しばらく狭いロッカーの中でやり合っていると、突然目の前が明るくなり、私は思わず目を細める。
明るくなった方向に顔を向けると、そこには、
「何か騒がしいなって思って……。いや、本当にいるなんて、思わなかったんだけど……」
やんわり微笑むが、混乱しているのを隠しきれていない湊先生がいた。
──ロッカーが、開けられた。