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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第21章 合法的に眺められると思えば、この時間も悪くは無い


謎の行為をお願いされたものの、気を取り直して彼の言う通り──と言う訳ではないが、私も似顔絵を描いていく事にした。

私は所謂『絵が描ける』タイプの人間だ。

私が絵心のある人間だと言う事を知った先生が、私に学年末に作る文集に載せる予定であるクラス全員分の似顔絵を描いてほしいとお願いしてきて、断りたい私と受けてほしい先生との戦いが勃発したのだがそれは今は関係のない話だ。

うっかり回想に入りそうになり、私は頭を振る。

結局断りきれなかった私は似顔絵を描く事になった訳だが、そのお陰からかそこそこのクオリティの似顔絵を描く技術を習得した。

クラス写真を手元に置きながら、用紙にひたすら似顔絵を描いていったあの時間。当時は地獄でしかなかったが、その経験が今活かされる。

誰が誰なのか分かるようにしつつ、二次元的と言うか、自分の絵柄と言うか──に落とし込むのは難しい。
しかし、今の私ならそれが出来る。やってやるさ!

えんぴつを持ち、輪郭を描く。
時折ちらちらと鳥束くんを見てどんな線にするかを考える。

バンダナで前髪が押し上げられているのか。こういうのって描くの難しいんだよなぁ。

少々苦戦しつつも、輪郭と髪の毛は出来上がった。あとは顔のパーツと、首から下か。

一息ついて目の前を見遣ると、鳥束くんは微動だにしていなかった。

「……ちゃんと描いてる?」

「もう描き終わりました」

「えっ、もう!?」

鳥束くんは、自分のスケッチブックを私に見せてくれた。
絵の私はスケッチブックを持ち、真剣な表情をしている。

「上手だね」

きっと、誰が見ても私だと分かるだろう。それ程上手い絵だった。
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