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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第21章 合法的に眺められると思えば、この時間も悪くは無い


「鳥束くんって絵上手かったんだ」

「見せる機会がなかっただけっスよ」


──この鳥束くんの絵の上手さは、実は口寄せによるものだと私が知るのは、もう少し後の話だ。


会話にも区切りがつき、私は似顔絵を描くミッションに戻る。

こんなにまじまじと鳥束くんの顔を見る事なんてないだろう。

おお、まつげ長いな……瞳が凄く綺麗だ……。

新たな発見をしつつ描いていく。

もう完成したからか、鳥束くんがずっと私の事を見ているせいで集中が途切れそうになる。

極力視線を気にしないようにしつつ描いていき、最終的に何だかカッコいい絵が完成した。美化しているような気もするけれど、元の顔が良いから問題ないだろう。

背景が寂しかったため、紙の上からグラデーションのように斜線を引く。よし、これで完成だ。

「お、出来ましたか?」

私が手を止めたのを完成したからだと判断したのか、何処かわくわくした様子の鳥束くんが話しかけてきた。

「うん、出来たよ」

手に持っているスケッチブックをくるりと回転させて、鳥束くんに見えるようにする。

「流石っスね名前さん。……名前さんは、俺の事こんな感じに見えてるんスか?」

そう問われ、少し考えてみる。
似顔絵にするにあたり自分の絵柄にした部分はあるが、まぁ、確かに……。

「見えてるよ。鳥束くんカッコいいし」

「えっ」

思ったままを言ったつもりだったが、何だか言い方が良くなかった気がする。

顔を真っ赤にして、か細い声で、
「そ、そっスか……」
と言ったっきり黙ってしまった鳥束くん。

素直に伝えすぎるのも良くないのかもなぁ、なんて考えつつ、私はチャイムが鳴るのを待つのであった。
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