第20章 文学少女に告るなら
「──え」
私はぱちくりと目を瞬かせ、今言われた言葉をたっぷりと口の中で転がしました。
私に、会いたかった……と。鳥束さんは、そう言っている……。
理解した瞬間、嬉しさが全身を駆け巡りました。私が会いたいと思ってたように、鳥束さんもそう思ってくれていたのだと。
古本を持つ手に、先程よりも力を込めてしまいました。
「……それと」
「はい?」
鳥束さんは一度息を吐きました。
「月が、綺麗ですね」
月が綺麗。そう言われ思わず上を見上げてみましたが、頭上に存在するのは青空だけ。月はまだ見えません。
「月なんてどこにも──」
私の言葉は、最後まで口にされる事はなく消えていきました。
もしかして、これは。
告白なのでは、と。
そんな事を、考えてしまったからです。