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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第20章 文学少女に告るなら


電車に乗り、会場である広場に到着した私は、
「……! ……!!」
広場に犇めく古本の数々を見て、声にならない声を上げました。

鼻を掠めるのは古書の匂い。嗚呼、天国とは此処のことだったのですね……!

鳥束さんは辺りを見渡し、
「すげー人いんな……」
と呟いていました。

今日は満足のいくまで古本に触れ合いますよ!

そう決意した私は、広場へと足を踏み出しました。



お店の一つ一つに立ち寄り、本棚に入った古本の背表紙を穴の空くほど見つめ、気になる古本を片っ端から手に取り購入する。それを繰り返している内に、持参した鞄の中には次々と古本が入っていき、全てのお店を見終わる頃には、使わないだろうと思っていた二つ目の鞄を使用するまでになっていました。

「そ、そんなに読み切れるんスか?」

私はどっさりと古本の入った鞄を二つも肩に下げていたので、鳥束さんにそう言われるのも無理はありません。確かに重くはあるのですが、この重みの数だけ読書を楽しめると思えば苦ではなく、寧ろ運ぶやる気が出ます。

「勉強などをしている時以外は本を読んでいる事が多いので、すぐに読み終わる方だと思いますよ」

「すげぇ……。つーかそれ重いでしょ、持ちますよ」

「えっ、でも……」

「いーからいーから!」

私は左肩に下げている方の鞄を鳥束さんに差し出しました。

その鞄を受け取り、
「良かったですね、こんなに読みたい本が見つかって」
と言い微笑む鳥束さんの眩しい事。

きっと頬が熱くなったのは、夏の暑さのせいだけではないのでしょう。
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