第2章 日直の相方がいないだけで難易度が跳ね上がる
よたよたした動きで+組の前を通る。
ちょうど通り過ぎるくらいに、
「名前さん」
と声をかけられた。
私は、声のした方へ振り向く。
「あ、鳥束くん」
声の主は+組の鳥束くんだった。
彼は、ダンボールと私を交互に見て、
「やけに大荷物っスけど……」
と言う。
やっぱり一人でやる量じゃないよなぁ。
客観的な意見も取り入れた私は、うんうんと頷いた。
「先生にこれ運んでって言われたんだよね。国語辞典って思ってたより重いや……」
続けて『日直の子が休みで』と言う前に、鳥束くんがダンボールを一箱持ってくれた。
私はびっくりする。
まさか、手伝ってくれるの?
「どこまで持ってくんスか?」
「えっと、国語準備室までだけど……」
戸惑いつつもそう答える。
「結構遠いっスねぇ」
なんて言いながら、鳥束くんは私の隣に並んだ。
「運ぶの手伝いますよ」
「えっ、いいの?」
「名前さんって体力ないし大変でしょ、俺もちょうど暇してましたし」
これは手伝ってくれる流れだ。
申し訳ないような嬉しいような、複雑な感情を抱く。
……あ、今嬉しい気持ちが勝った気がする。
「ありがとう」
とにかく、お礼を伝えなきゃね。
「役に立ててるんなら嬉しいっス」
にっこりと笑うその表情に、ちょっとドキッとしてしまった事は、絶対に知られたくない。