第19章 さらば日常
夜になり眠り、目が覚めても元の世界に戻ってはいなかった。
私の斉Ψ世界での生活が幕を開けそうだ。
そんなわけで今日は平日。朝食を食べ顔を洗い、他にも支度をしていく。
制服に袖を通す。
この世界で生活している私の記憶を手に入れたとはいえ、やはりPK学園の制服は着慣れなかった。制服に着られているような気がしてくる。
自室に置いてある姿見で自分の姿を見てみる。
まるでコスプレでもしているようだが、これは本物の制服だ。
「…………」
姿見の前でピースをしてみる。……いや、何やってるんだ私は。
さっさと学校へ行こう。
忘れ物がないかを確認してから、私は玄関へ向かった。
靴を履き、玄関のドアノブに触れたところでふと視線を横に移す。
靴を入れている棚は一個前に使っていたものになっている。
自室のカーテンも昔使っていたカーテンに変わっていたし、冷蔵庫も買い換える前のものになっていた辺り、斉Ψ世界の年代に家の時間が巻き戻っているのだろう。
小さな変化ではあるが、気になりはする。
「……よし」
そんな気になる気持ちを吹き飛ばすように、私は一度深呼吸をしてから扉を開けた。