第18章 あんな事を言う辺り、俺はあの人に一生勝てる気がしない
「そんな事言うって事は、好きな人は俺! ……なんて」
自分で言ってて恥ずかしくなってきた。
頬に熱が集まっているのを自覚する。
今すぐ発言を取り消したい、なんて後悔をしだした頃。
「正解」
耳を疑うような言葉が、苗字の口から出た。
「はっ!?」
鳥束は、思わず大声を上げてしまった。
今この人、何て言った!?
「す、……好き、って」
「言った。私の好きな人は、鳥束くん。……君だよ」
苗字は目を細める。見た事もないような優しげな表情に、鳥束の胸が高鳴った。
「ああ、私まだ黒板消してないから先に教室戻るね。正解した鳥束くんは、眠れない夜を過ごせばいいと思うよ」
悪戯っぽく笑い、椅子から立ち上がった苗字はトレーを持ち上げて食器類を返却しに行った。
食器類を返却した苗字が教室に向かいだした頃。
「……マジかよ」
頬を真っ赤にさせて呟いた鳥束の声は食堂の喧騒に掻き消され、誰にも聞かれる事はなかった。