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外見至上主義に抗いを

第2章 入学


そしてそのままなんの進展もなく、この日の学校は終わった。

「ただいま〜」

淑「おかえり」

「ただいまばあちゃん、まだお兄ちゃんは帰ってきてないんだね」

淑「あぁ、おばあちゃん印鑑を無くしちゃってねぇ、どこにあるか知らないかい?」

「そうなの?分からないなぁ、ちょっと探してみるね」

の祖母は1年前、認知症を患った。おかげで物忘れがひどくなり、たまに徘徊などもしてしまう。
そのため、詐欺などにあってしまわないよう、通帳や印鑑などは勝手に持ち出せないよう、祖母の知らない場所に隠してあるのだ。

「あ、あったよー、はい、何に使うの?」

祖母「あーちょっとね」

「ふーん、そっか」

は自分が帰ってきているから、祖母が勝手にお金を下ろしに行ったりはできないのでそのまま深くは聞かなかった。
それからしばらくすると、遊が帰ってきた。

遊「ただいま」

「おかえり」

淑「おかえり、遊。学校はどうだったんだい?」

遊「いつも通りだよ、ばあちゃんは今日どんな1日だったの?」

淑「今日はねぇ…」

祖母は遊に今日一日の出来事を話した。実際には本当に今日起こった出来事ではないことも話している。

「…」

も黙って祖母の話を聞いた。
しかし、今日初めて学校へ行った自分には何も聞かず、いつも行っている兄には学校の感想を聞いているのが少し辛かった。
認知症になる前はそのように感じることはなかった。
だが発症してからは露骨に遊だけを気にかけることが増えた。
遊は祖母の初孫である。初孫はやはり可愛いのだろう。
一通り祖母の話が終わると、3人はご飯を食べ、祖母は風呂に入った。
案の定印鑑は何に使うわけでもなかった。


遊「学校はどうだった?友達はできたのか?」

「友達っていう友達は出来てないかなぁ、お兄ちゃんは?」

遊「そうなのか、建築学科にはすげぇ新入生がいたぞ」

「そうなの?どんな?」

遊「友達が力試しとか言って喧嘩ふっかけたんだけど、歯が立たなかったね」

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