第3章 転校生
蛍「家の前まで送るよ」
「いや大丈夫だよ、ありがとう」
蛍「でも…」
「…私ね」
は少し重い口を開いた。
「私の家、すごい貧乏なの。だからバイトもコンビニともう一つ掛け持ちしてるんだ。両親もいないから、ばあちゃんとお兄ちゃんと3人で暮らしてて、家もすごいボロボロなんだよね。」
蛍「あ…」
「だから見られたくないなぁ…なんて思っちゃって…ごめんね、せっかく送ってくれるって言ってくれたのに」
蛍「そうだったんだ…僕の方こそしつこく言ってごめん」
「いやそんな、蛍介くんが謝らないで」
蛍「ここから家までどのぐらい?」
「この坂を上って右に曲がったらすぐだよ」
蛍「それじゃあ坂を上り切るところまで送らせてくれないかな?」
「うん、いいよ」
ふふ、とはにかんでは言った。
蛍「ありがとう」
「こちらこそありがとう」
そこから2人は5分ほどで坂を上りきった。
その間無言だったが、、2人の間に気まずい空気はなく、むしろ2人の心には温かい気持ちが広がっていた。
「着いちゃったね、ありがとう、蛍介くん」
蛍「こちらこそありがとう、送らせてくれて」
「ふふ、どういたしまして、それじゃあまた明日ね」
は手をひらひらと振ってその場を去ろうとした。
蛍「ま、待って!」
「ん?」
は首をかしげて振り返った。
蛍「あ、いや…えっと…その…」
「?」
蛍「じ、時間が合うときはまた送らせてほしいな…って…思って…あ、嫌だったら全然いいんだけどさ!」
「ふふ、じゃあお願いしようかな」
蛍「え、いいの?」
「なんで蛍介くんがそんなに遠慮するの?むしろ私の方こそいいの?って感じだけど」
蛍「え、いや…なんか…ね…」
蛍(もしあっちの体でこんなことしたら嫌がってたかな…聞いてみようかな…でも怖いな…いやでも聞いてみよう)
蛍「もし…」
「うん」
蛍「もし僕が時間が合わなくて、友達の蛍介が時間が合う時には、蛍介に送らせても…いい…?」