第12章 転校生2
帰り、は缶詰を持って犬のところへやってきた。
犬「ワンワン!」
「大丈夫、怖くない」
犬「ワンワン!」
「何もしないよ、大丈夫だから」
は後ろから足音が聞こえたので、振り向いた。
犬「ワンワン!」
「あ、明里ちゃん…」
明「様子見にきたの」
「私も。この子、妊娠してるみたいなの。ウチで飼ってあげたいけど犬を飼う余裕は正直ないから…」
明「私も飼ってあげたいけど、ここを離れようとしないし…ほら食べて」
明里が手にフードを乗せて差し出すと、明里の手をかじった。
「あらら、ダメだよ」
明「そうじゃなくてご飯食べなきゃ!それは私の手でしょ?」
「赤ちゃんいるんだからちゃんと栄養つけなくちゃ」
明「犬、好きなの?」
「え?あ、うん。動物は基本的にみんな好きだよ。人間より全然好き」
明「なんで…?」
「心が綺麗だから。人間は損得を考えたり、妬みや嫉みで意地悪したり、裏切ったり、そういう狡い気持ちを持ってる。だけど動物は本能に従って生きてる。ただ生きるために、行動をする。人間より弱くて知能も低いんだろうけど、動物の方がずっと清くて正しい。だから動物は好き」
明「もしかしていじ…」
蛍「あ、ちゃんに明里ちゃん?」
「蛍介くん」
明(ま、またこいつ?そっか、この子も家この辺なんだ。せっかく聞けそうだったのに…)
「どうしたの?」
蛍「あ、いや…その子飼い主に捨てられちゃったみたいだから…ご飯あげようと思ってさ」
そう言う蛍介の手にはドライフードが握られていた。
明(わざわざこの子のためにご飯を?)
蛍「2人もその子に会いにきたの?」
「うん」
明「バカね、餌だけ買ってきたの?水もないのに…」
蛍「だ、ダメだった…?」
明「この子モコって言うんだって。飼い主が引っ越す時に置いて行かれたみたい」
モコの飼い主は、血統書付きの母親だけは連れて行き、雑種のモコだけを置いていったのだ。
「ひどいね。どうして置いていくことができるんだろう」