第3章 要さんは多分推しにグイグイ行くタイプ
要ユウキさんが食べていないのは、食事制限とかがあるからなのかなぁと考えつつ。私はクッキーを食べていた。
お菓子を出すのは迂闊だったかなぁ。まぁいいか、食べよ。私は逞しくありたい。
最後のクッキーに手を伸ばす。
手に取ったタイミングで、
「君の部屋を見てみたい」
と言われた。
思わずクッキーを机に取り落としてしまった。
「部屋を?」
クッキーを拾いながら私が聞き返すと、要ユウキさんは頷く。
「いや、部屋は……ちょっと……」
この流れは不味い。このままいくと、部屋を見せる事になってしまいそうだ。
それだけは阻止しなければならない。
なぜなら私の部屋にはホワイトメモリー、要ユウキさんのグッズが大量にあるから……!
「私は、君の部屋を見るまで帰らない!」
渋る私に頷かせるためなのか、彼女はそんな事を言い出した。
「実は、私は仕事の合間に来ていてね。あと一時間もしたらマネージャーたちと合流しなくてはいけないんだ。……見せてくれるかい?」
いつの間にか要ユウキさんは立ち上がって、私の周りをうろつき始めた。スライドを使って説明しながら歩き回るアレみたいだ。
「いやいや、本当に部屋は無理ですって!ㅤ時間ないんなら帰りましょう!ㅤね!?」
無礼を承知で要ユウキさんの腕を掴み引っ張ったけれど、彼女は全く動かない。強すぎる!
ただの脅しじゃなくて、要ユウキさんは本気で言っている気がする。そういう凄みがあった。
これはもう……見せるしか……。
私はため息を吐く。
「……いいですよ、見せますよ……!」
「本当か!?」
彼女の顔がぱあっと輝いた。