第4章 テレビから推しの声が聞こえてきたら秒でテレビに視線を向ける
いやぁ、この文章は送っちゃだめでしょう。
気分転換がてらテレビをつけると、丁度CMが流れていた。
このファストフード店の新メニュー美味しそうだな。今度食べてみよう。
テレビから視線を外し、手元にあるペンを何となく眺めていると、
『へぇ、いい所だな』
何度も聞いた、要ユウキさんの声が流れてきて、私はすぐさまテレビに注目した。
彼女は家の中をスーツを着た人と共に歩いている。時折きょろきょろと辺りを見渡しており、ふとカメラの方に視線を向けた彼女は、
「ここにするか?」
と言った。
これは……もしや、もしや……! 不動産会社のCMでは!?
噂には聞いた事があった。要ユウキさんが、不動産会社のCMに出ていると。
SNSで見たと投稿している人が何人もいて、私もそのCMを見ようとテレビの前に張り付いていたのだが、中々見る事が出来なかったのだ。
やっと見れた……! 三十秒バージョンは体感としては結構長めであり、流れている間は終始私の頬は緩みに緩んでいた。
それにしてもこのCM、まるで要ユウキさんと物件を見に行ったみたいだなぁ……これから同棲する、みたいな。
いっいや、私、なんて事を考えているんだ!?
慌てて頭を振り、思考を打ち消す。
ファンレターの文面しかり、今考えてしまった事しかり、本当に私はどうしちゃったのだろうか……。
机に突っ伏してしばらくしてから再度ファンレターを書いたところ、CMを見る事が出来た嬉しさからか良い感じのファンレターが完成した。
ポストにファンレターを投函した私は、無事に自身の気持ちを伝えられた事が嬉しく、スキップをしながら帰宅したのであった──。