第2章 顔が良すぎて前を見れない
「あの日、オフだった私はこのカフェに来ていたんだ」
「はぁ……」
語りが始まった。
私を推している理由が、これで分かるはずだ。
ちゃんと聞かないと……!
「その時、ちょうど君と……君の友達もカフェにいてね」
そう言いながら要ユウキさんは、あゆむに視線を向けた。
嘘、私推しと同じ空間にいたんだ!?
衝撃の事実に、頬が緩みそうになる。
いかん、まだ話の途中だ。
集中集中!
「葉月さん、君はその時も、今みたいに私の事を語っていたんだ」
「えっ?」
「私を語る君の表情は輝いていた。何かに夢中になるその姿が、私にはとても魅力的に見えたんだ!」
「ええっ?」
彼女の言う『あの日』がいつなのかが分からないから、何を語っていたのかまでは覚えていないけれど……。
このカフェに来た時は大抵やりすぎなくらい語っているから、きっと『あの日』とやらでも相当語っているはずだ。
推しについて語っているのを本人に聞かれるなんて、相当なレアケースではないだろうか。
「そんな君を見ていたら、今まで感じた事のない感情が湧き上がってきたんだ。そう……これが『推せる』という気持ちだ!」
力説する要ユウキさん。
これ、私について話してるんだよね?
どんな顔すればいいのか分からないんだけど……。