第2章 顔が良すぎて前を見れない
「君が、葉月さん……森田葉月さんだね?」
女性が口を開く。
「えっはい、そうですけど……?」
何でこの人、私の名前知ってるんだ……?
私がポカンとしていると、女性が手を握ってきた。
「……やっと会えた」
ポツリと女性が呟く。
この声、どこかで聞いた事があるような気がする。
顔も、見た事あるような……。
喉元まで出かかった答えは、続く女性の言葉によってかき消されてしまった。
「よく聞いてくれ!ㅤ君が私の、推しなんだ……!」
「えっ、ええ!?」
握った手に力が込められる。
それはそれはもうぎゅうっと。
絶対に離さないという意志を感じた。
困って向かいの席に座るあゆむを見るが、彼女もどうすればいいのか分からずオロオロしている。
今、この人『私が推し』って言った……?